ウウゥン、ウウゥン、とか。
バシャバシャ、バシャバシャ、とか。時折、ガガガッ、ガガガッ、って。
洗濯機の音が聞こえてくる。
もちろん他所の洗濯機の音だ。うちには洗濯機はない。
ずっと横になって寝てた。
からだが寒くてうずくまっていた。ウウゥンやら、バシャバシャやらの一定のリズムで聞こえてくる音が自分の心臓の音のように錯覚しながら眠りにおちたり、目を覚ましたりを繰り返した。
悲しい夢をみた。
以前、個人でやっていた事業をやめなくてはいけなくなって、おまけにもう二度とやり直すことなんてできなくなって、そのすべてを失ってしまったのだけど、夢の中では案外、まだ継続していたりする。
あの頃と変わらない日常があって、忙しそうに苦労しながらもそれなりに充実感があって、何より楽しい日々だったと思い返したりもできる。
そんな夢はちょいちょい、いや、しょっちゅうみている。目が覚めて少しだけ寂しい思いをする夢だ。
でも今日の夢は違った。
もう、すべてを失ってしまった後の夢だ。
僕は心の病いを患い病院を転転としていた。当時の仲間が見舞いにきて僕を励ましてくれる。
そんな仲間の一人と一緒に外出した時、偶然僕の事業をそっくり真似たことをしている連中と出会う。僕は近づくことも出来ず、遠目にさえ見ることも出来ず、隣にいる仲間に「だめだ」とかなんとか言いながら、うつむき涙を流しながらその場から逃げた。
僕がやっていた事業だった。この先もずっとやっていくはずの事業だった。涙が次々と溢れ出してくるのを、隣にいる仲間の手前、なるべくみっともなくならないように格好つけながら隠しつつ泣いていた。どう見ても惨めったらしい姿なんだけど。
隣にいた仲間は、いや、仲間というか女性なんだけど。
彼女も泣いていた。僕が悔しがってると思ってそれが伝わって泣いたのか、ただかわいそうだと思って泣いたのかわからないけど、彼女は僕以上に泣いてくれた。
僕はそれ以上泣かなかった。
涙を流す彼女をみてた。
やさしい涙だった。
夢から覚めて思う。
すべてを失ってしまったと言って、すべての人と連絡を絶っている自分。それはかつての仲間に対しても同じだった。
気持ちの浮き沈みが激しく、今日なんかは何も出来なかった。動く気にさえなれなかった。食事も取らずに夜を迎えた。
食欲はないけれど、ほんの少しだけお腹が空いていることで、自分が今日を生きたことの確認でもするみたいに、どうでもいい一日を今日もやり過ごしたことを確認する。
こんな日には、自分が腹を空かせていることでさえ惨めに思える。
そろそろ食事を取ろう。
少しだけ気持ちも落ち着いてきた。
〝書く〟という作業に僕は救われている。
今日書いた文章の先に続く何かを想像し、それをまた書くことだってできる。
なんだってできる。