カステラ書房の毎日

〝令和きってのドラマウォッチャー〟阿倍カステラが所属する『カステラ書房』

読むドラマ □ case11 『美食探偵 明智五郎』最終話〈SPにつき後編〉

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□オープニングストロベリー〈苺〉

〝最後の晩餐〟のテーブルセッティングをする林檎(志田未来)に必死に語りかける小林苺(小芝風花)。最後に「どういう事? 」



日本テレビ『美食探偵 明智五郎』

毎週日曜 22:30〜 記事は最終話より


〈注〉この記事は「SP後編」です。「SP前編」をお読みでない方は、7月5日公開分の「読むドラマ ep10」をご覧ください。


【基本的に全編ネタバレ】






『カステラ書房の毎日』は深夜1時に毎日更新中‼︎

◉阿倍カステラの「テレビ買ってよ」

◉読むドラマ シリーズ

など人気企画を日替わりで更新してます。



さあ、みんなーっ「読むドラマ」はじめるよ

〝最速の執筆家〟阿倍カステラが車掌も運転手も兼任する「読むドラマ」という名の快速列車。

毎度、脱線に次ぐ脱線でダイヤ乱れまくりのトークバラエティー

さあ、乗ってらっしゃい読んでらっしゃい。駆け込み乗車も大歓迎⁉︎ 

今宵も見切り発車で出発進行!


振り返り度 ★★★

今回「振り返り度」星3つで割と振り返り強め。

でも、あらすじ紹介ではないので大胆にも端折ったりしてる。


無駄に長話して前後編に分けたんじゃない事を、この後編で証明してやる!

「読むドラマ」記念すべき10回目(前回分)のSP版の価値を、とくとご覧ください(えらく強気)。






『美食探偵 明智五郎』最終話より


オープニングストロベリー〈苺〉 extra edition


「どうしてこんなところにいるの? こんな事をしてるの? 」

林檎「あたしに行くとこなんてねぇから」

「青森の、青森のりんご農園があるじゃない。優しいおじいちゃんがいるじゃない」

林檎「もう本当に、ここにいるしかなくなった」

「どういう事? 」


以上、苺と林檎の会話シーン。

なんだかフルーツの妖精同士の会話みたいでメルヘンチック。会話の内容は別として役名がね。


そこへ割って入るドアのノック音。






ついに始まる〝最後の晩餐〟

部屋に通される明智。そこにはマリアが選んだウエディングドレスを着せられた苺が待っいてる。


明智さん」

明智「招待状が届いてね、最後の晩餐の」

「最後の晩餐? 」

明智「やはりこういう事になっていたか」

「なっちゃいました」


ここのところ苺はマリアに捕らえられて、それを明智が助けに来るという展開が続いていた。それに〝最後の晩餐〟だというのに、緊張感のない会話をする二人。これもいつもの調子。


そこへマリアが現れる。

マリア「ようこそ、私たちの最後の晩餐へ」



明智「マリア、改めて君にどうしても言っておきたい事がある」

マリア「なにかしら」

明智「今日の選定会の事だ。これまで君の裁きは、悪人に向けられたものだったはずだ。弱者を救うための殺人。矛盾をはらんだ正義。僕はそれをあえて、美しい悪と呼ぼう」

マリア「美しい悪? 」満更でもない笑顔を浮かべて「いい響きね」

明智「だが、今日の悪は美しくない。僕にしてはめずらしく心の底から怒っている」

マリア「うれしい。あなたの心を私が支配してる」


苺はテニスの観戦でもしてるみたいに明智とマリアを交互に見て、その言葉一つ一つに表情で答えてた。ほんとに表情が豊かなんだ。ある意味、言葉は発してないけど明智とマリアの会話に参加してるようにも見えた。


ここでマリアファミリーの三人が入ってくる。




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グラスにワインを注ぐれいぞう子(仲里依紗)に気づき驚く明智五郎(中村倫也)。

明智「生きていたのか? 」

れいぞう子「お久しぶりです明智さん」

明智「ありがとう、生きていてくれて」

マリア「おもしろいこと言うのね、探偵さん。お友達をバラバラにした殺人犯に、生きていてくれてありがとう? 」


明智「A5ランクのフィレステーキだって焦がしてしまえば台無しだ。だか焼く前なら、焼き加減の変更もできる」

シェフ「よく分からない例えだな」

苺 激しく同意(表情だけで)

明智「どんな理由があろうとも、彼女はステーキを焼き直すためにキッチンに立つべきだ。人生という名のキッチンに」



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「そしてそれは、少なくともここではない」




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「君も」




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「君もだ」



シェフ「さあ、料理が冷めてしまいます。大丈夫、毒なんか入ってませんよ」


「シェフとして哀しくはないですか? 私も料理人の端くれです。自分が作った料理を振る舞う時に、毒は入ってませんなんて」

明智「苺、よせ」〝苺〟と言ったのは確認済み。

「そんなの、同じ料理人として哀しすぎます」


その苺の言葉を聞いて、その場にいる5人の表情が短いカットで映し出される。誰も言葉は発しない。ただ一人、苺が「いただきます」と言って手を合わせシェフの料理を口にする。


「おいしいです」

マリア「ありがとう」

シェフ かるくお辞儀をする



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「おいしいけど、おいしくないです」



「このワインで煮込んだお肉、柔らかくてソースも上品で…」ここまで静かに語っていたが、次第に言葉に熱がこもる。

「でもこれが最後の晩餐なんて私はいやっ! 」

マリアを睨みつける苺。


「お料理ってのは、食べる相手の事を思いやって作らないとおいしくはならないと思います。私は、いつだって自分のお客さんを元気にしたいと思ってます。こんな、毒は入ってませんよなんて言い訳しなくちゃならない料理なんかより、あたしが作るちくわの磯辺揚げの方が絶対絶対おいしいです。あなたに料理人としてのプライドはないんですか」

明智「苺、そのへんにしとけ」

「これが明智さんと私にとっての最後の晩餐なんだったら、もっと心のこもったおいしいものを食べさせてください」


マリアはそんな苺にさっと近づき「おだまり」と首に注射器を刺す。

明智がマリアを突き飛ばすが時すでに遅し、苺は床に倒れる。

マリア「さすがトリカブト、毒の効き目が早いわ」

苺を抱き抱え部屋を出ようとする明智に、


「もう遅い! もう手遅れだ」

医者のような事を言い出すシェフ。白衣は着てるけど! それコック服!


シェフの言葉に呆然と立ち止まり「いちごー」と大声で叫ぶ明智

笑い出すマリア。最初は笑いながら「見て、みんな見て」と言っていたが、「見なさあい‼︎ 」と怒鳴るマリア。

「これよ、これが絶望」


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「これこそ絶望というもの、あははは、あははは」





マリア「探偵さん、もうあなたも目が覚めたことでしょう。あなたを惑わせていたものは今、消えたわ」

明智「絶望感」

マリア「そう、絶望する事で目覚める事があるわ」

明智「いま、ここには絶望しかない」

マリア「そうよ、そうなの。私たちはいま、絶望と共にある。どう? 最後の晩餐のメインディッシュの味は」

明智「たしかに僕は、君と出会う前からすべてに絶望していたのかもしれない。自分自身に、この世の中のすべてに。僕が僕らしく生きようとすると、必ず世の中のすべてが僕を嘲笑い、僕に背を向けた。お前は変だ、変人なのだと。でも僕はある日、そんな僕を力強く、真正面から受け止めてくれる相手と出会った。出会えたんだ」


「ちくわの磯辺揚げだ」


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「はっ? 」



明智「ほんのささやかな慎ましい食事であっても、この日まで生きてきてよかったと思える時がある。こんな僕でも生きていていいんだと」


明智「生きることは食べることだ。食べる事で生きる希望が生まれる。それをいつも、全身で示してくれていたのが…」



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「この人だった」


ここで、これまでの小林苺のいろんな表情をしたカットがバババっと一気に流れる。その最後は「あなたのことが好きなんです」と泣きながら叫んだ前回・第8話のカット。



小林苺の「あなたのことが好きなんです」がずっと僕の頭の中でリフレインしていた。


「美食探偵」と言いながら、やたらとちくわの磯辺揚げを好んで食べるなって『美食探偵 明智五郎』を見てて引っかかってはいた。もっとゴージャスで贅沢なもんを食べる人なんじゃないかって先入観もあったから。


「ちくわの磯辺揚げ」ってのも言い得て妙だなって思う。

小林苺って、これは演じてる小芝風花さんに言えることだけど、絶対的美少女ってわけでもない(いや、小芝風花さんはかわいいですが)。でもそんなものがちんけに思えるほどに内面が滲み出ててかわいいんだ。


その〝かわいい〟は、絶対的美少女を褒め称える「かわいい」とはわけが違う。

その〝かわいい〟は、愛する人を愛おしく思う気持ちを簡単な言葉に言い換えたのさ。



誰だってそうだと思うんだ。

僕だってそうさ。

気がつくとすぐそばにいる、大切な人が持ってる〝かわいさ〟なんだ。


失くしてはいけないものに、失くしてから気づくなんて事は、僕だってこの胸が引き裂かれんばかりに知ってる。

誰だって多かれ少なかれ知ってると思うんだ、ねえそうでしょ?



明智五郎は小林苺が好きだったんだ。



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「そんな人を君は殺した」



明智「マリア、これを絶望と呼ばずになんと言おう」


マリア「そう。わかったでしょ、私たちは絶望の名のもとに結ばれているの」

マリアが手をそっと伸ばし明智の頬に触れようとするが、その手を明智はつかんで、


明智「君にはまだ、わかってないだろうことが一つある。実はここにはまだ、一つだけ希望が残されていると」


明智「開けてしまったパンドラの箱から邪悪なものがすべて解き放たれた後、その箱の底に最後に一つだけ残されていたのは希望だ」


マリア「どういうことよ ‼︎」取り乱し声を荒げる。

「ここに、こんなところに残されてる希望って何よ! 」


明智「それは…」



その瞬間、


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外から照明が当てられ「そこまでじゃあー」と上遠野警部の声。ここだけ見ると銭形警部のよう。ならば明智とマリアはそう、ルパンと峰不二子。でも、もちろん明智は「上遠野のとっつぁん? 」とは言ってない。



「希望? 」と、こんな状況下で何事も無かったかのように話を戻すマリアはさすが。


マリア「私はねえ、希望っていう言葉が世の中で一番嫌い。アイツらは裏切りものだから」

明智「マリア…」

マリア「ここにいるみんなはそれを知った。私たちはそれを思い知らされた、だからここにいるの。あなただってたった今、思い知ったばかりでしょ」

林檎「探偵さん、私たちにはもうマリアさんしかいないんです」

れいぞう子「私なんか、本当は生きてちゃいけない。生きてる資格なんてないのに」




「いい加減観念して全員出てきなさい」と上遠野。「ほんならこっちから行っちゃるき」と明智やマリアがいる建物の中へ先入を試みるが、それよりも先に包丁を手にしたマリアが外へと飛び出してきて上遠野を襲う。


そこで銃声。マリアは足を撃たれた。

日本の警察が拳銃を撃つ際は「撃つ」ことを相手に警告し威嚇射撃を行う等の段階を踏まなくてはならないが、この場合は仕方ない。上遠野警部の命が危なかった。


足を滑らせ倒れた上遠野を仕留めようとマリアが包丁を振り上げた瞬間、再び銃声。

日本の警察官の99.9%は一度も拳銃を撃たぬまま退職すると以前マリア自身が言っていた。犯人を殺しちゃえばいいのに、とも。


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0.1パーセントの男・高橋警部補



しかし、実際に高橋警部補に撃たれたのはマリアではなく、マリアをかばったシェフ。



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明智「シェフ、君だね。注射器をすり替えたのは」

シェフ「バレたか」口から血を吐きながら

明智トリカブトの毒なら死に至る場合、全身が痺れ吐き気をもよおすはずだ。しかし一号(苺)にはそれがなかった。トリカブトではないとすぐにわかった。すり替えた注射器にはおそらく一時的に意識を失うミダゾラムジアゼパムか。それに気づいた時、僕は感謝した。ここにも希望があった、と」


明智「ありがとう、シェフ」


シェフ「まだだ。まだ今夜のデセール(デザート)が仕上がってないんだ」

「苺のムースなんだ」と、血を吐き苦しみながらシェフはそのデセールの名を口にした。



邪魔して申し訳ないけど(そういう趣旨でやってるんで)、ここで僕は「うわっ」って声を上げて泣いた。もうずっと前から泣いてたけどね。


「美味いぞ」とシェフ。死んでしまう前にどうしても言っておかなくちゃいけない事だったんだ。


それだけ言ってしまうとシェフは仕事が終わったみたいにふらふらと場所を移動し、柱にもたれてタバコを咥える。ライターで火をつけようとするがもう体は言うことを聞かない。


シェフが命尽きる最中、マリアは車に乗って逃走する。

「何をやってんだ、警察は! 」じゃ〜ない。

今はそんなツッコミを入れてる場合じゃない。ここで終わらない展開のすごさを褒め称えようじゃないか。ここは僕に免じて許してはくれまいか(どの立場? )。


赤い車に乗って走り去るまさに峰不二子級に逃げ足の早いマリアを、反射的に走って追いかけようとする明智の前に現れる〝いちごデリ号〟。運転手はもちろん二号こと桃子。「乗んな! 」と、ここぞという時に頼もしい。





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物語の始まりに戻ったような崖の上。

けっして、◯◯サスペンス劇場の犯人みたい、じゃない(船越英一郎さんは無関係)。


明智「どうするつもりだ」


マリア「あの日、ここから飛び降りた時。死んでもかまわないと思ってた。でも、神様は助けてくれた」


マリア「もう一度、神様が奇跡を起こしてくれたら私を愛してくれる? 」

いつものように明智の頬に手をあて問いかけるマリア。


何も答えない明智

マリアの頬を涙がつたう。

宇多田ヒカルの『Time』が流れ始める。


もうここまで存分に泣いたんで涙も枯れ果ててると思ってたら、やっぱりこの歌に泣かされた。このシーンにこのドラマに溶け込みすぎててそれはもう、避けることはできない予め決められていたかのように。





この後の事を書いていたら、ここで終わらせてまた次回へって展開になりそうだからやめとく。



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ただマリアは崖の上から消えた。



もうすでにTHE ENDでいいんじゃないっていうシーンは何度もあったけど、このドラマのすごさはここからだ。


想像を絶する豪華ディナー


日常的なシーンが展開され、上遠野警部と高橋警部補のコメディ・リリーフ的な場面や、明智と苺のいつものコミカルなやり取りが展開される中、マリアが思い描く〝最後の晩餐〟シーンまで描かれている。このシーンがまた秀逸で感動的なんだ。


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すべての物語には希望が描かれている、と誰かが言ってた。

希望と絶望は背中合わせとか隣り合わせとかも、よく言われてる。

だとしたら、絶望にもまた終わりがない。





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このドラマの デセールはココ(武田玲奈)?


たぶんこの時点で、2020年のNo.1ドラマだ。

令和のドラマウォッチャーがそう言ってる。




〈おしまい〉




【番組後記】


説明

いやあ、とにかく力のこもった記事になった。前後編に分けた判断は正しかった。その判断を下した自分を、オリンピアン・有森裕子さんばりに自分で褒めてやりたい。


昨日、5日(日) だって、本当は1日2本公開も可能だったんだけど、この記事に集中するためにそれをやめ、その分の力を注いだ。


劇中で小林苺が打たれた注射器に、実際に入っていたものと明智が推理した薬品をWikipediaで調べて準備していたが、記事中には使う場所がなく、ここに掲載する。


ミダゾラムベンゾジアゼピン 系の麻酔導入薬・鎮静薬の一つである。日本での商品名はドルミカム


説明

ジアゼパムは、主に抗不安薬、抗けいれん薬、催眠鎮静薬として用いられる、ベンゾジアゼピン系の化合物である。


ミダゾラムの日本での商品名は「ドルミカム」、なんかドリカムみたいじゃない? って、これが言いたかっただけなんだけど。


あと、劇中で明智が小林苺の事を「一号」と呼ぶ場合と「苺」とちゃんという場合があったが、その小林苺が普段は一人称を「私(わたし)」としてるけど、興奮してたり熱くなると「あたし」と言ってる。こういうのってこのドラマに限らずよくあることなんで、書き始めといてなんだけど、もういいです。


男だって「僕」って言ったり「俺」って言ったりするもんね。

でも aiko さんには「あたし」って歌ってて欲しい。

時と場合により変えられては困る場合だってある。





〈次回も楽しみに〉