(2017年1月-3月放送 主演 上白石萌音)
MBS 2020年7月23日 再放送スタート
毎週木曜深夜0:59〜
記事は9月10日(木) の八食目(第8話)より
【基本的に全編ネタバレ】
2020年9月より更新時間変更!
『カステラ書房の毎日』
毎日 カステラタイム / 午後3時更新!
その日の状況により多少変更になる場合もありますが、これまで通り毎日更新は継続します!
☆読むドラマとは?
やいのやいの言いながらドラマを見る感覚で、このドラマの面白さを一緒に語り合ってるように読んで楽しめるものである。
また、トークバラエティー番組っぽくやってるつもり(探り探り)でもある。
基本的にはドラマを先に観てください。
それと、ドラマを観るつもりもなかった方が、これを読むことによって「観てみよっかな」ってなってくれたら最高! なので、地味にそこも目指してる。
☆八食目の【前編】をまだお読みでない方はこちら
『ホクサイと飯さえあれば』【後編】
◇ブンの家 台所
「ジュンちゃん。ロールキャベツ作ってからトマトにハマってるんだよね。だからトマト入り餃子なんてどうかな。餃子のタネと一緒にトマトとチーズを入れて包むの」
台所で一人、冷蔵庫の扉を開けたまま〝ブン〟こと山田文子(上白石萌音)は独り言を言ってる。
しかもこの流れで〝エア クッキング劇場(食べるのみバージョン)〟となる。
「パリっと香ばしく焼けた羽根付きトマトチーズ入り餃子をザクっ!」
「う〜ん。パリパリもっちりの皮から肉汁とトマトのジュースがじゅわ〜。チーズがとろ〜りでおいしさの三重奏が広がるよう」
やはり気持ちが乗らずいつものようにはいかない。目の前にその情景が浮かばない。エア クッキング劇場は不発に終わる。
ブンは間髪入れずに、ナギや柑田川の好みに合わせたオリジナル餃子も考えて、声に出してあたかも会話してるかのように独りごちる。
「なあんて。食べる人を喜ばせたい。幸せにしたいって気持ちが料理を魔法にするんだね」
「その魔法で友達ができた。けど私の心にずっと魔法かけてくれてたのはホクサイ」
「ホクサイだったんだね」
ホクサイを抱きしめ、ブンはホクサイが言ってくれたことを思い返す。
「たまには誰かと一緒の方が楽しいと思わんでござるか?」
「誰かのために料理をするのも、いいもんでござるよ」
それまでずっと、料理は自分のために作るのだと言っていたブン。
誰かのために料理を作ること。それを誰かと一緒に食べること。その楽しみを教えてくれたのはホクサイだった。
ホクサイの言葉を胸に、ブンは食べてくれる人のことを思って一つ一つ心を込めて餃子を包む。(冒頭の画像)
「できた」
バックに流れてる鍵盤楽器のみで演奏されるバラード調な HY『HAPPY』が心にしみてきて、まさかね。餃子を見ながら涙するなんてね。思いもしなかったよ。
さっそくブンは、〝ジュン〟こと有川絢子(池田エライザ)に電話する。
だがジュンはその電話を取らない。
「ジュンちゃん、さっきはごめんなさい。うちに来て一緒に餃子を食べませんか? 」
すかさずメッセージにその想いを託す。
家を飛び出してジュンを探すためにブンは走る。
「ちゃんと言えなかったけど私は絶対、ジュンちゃんに嘘なんかついたりしないよ」
ジュンと初めて出会ったパンケーキのカフェ。
ジュンと初めて言葉を交わしたパン屋さん。
「ジュンちゃんがそう思ってなくても、私はジュンちゃんのこと親友だと思ってます」
荒川の土手をブンは走る。
「魔法使いさん、お名前は? 私は有川絢子。糸へんに食べものの旬、であやこ」
荒川の土手でジュンと自己紹介をしたことを思い返す。
走りながら、息を切らしながら、ブンはその時の言葉を口に出す。
「私も〝あやこ〟文章の文に、子であやこ」
荒川の土手でジュンの名前を呼ぶ。
◇ブンの家
結局ジュンを見つけることはできず、ブンは肩を落として帰宅する。
すると、「わっ!」といたずらにブンを驚かすいつものナギがいる。
「ブン、ラップしてないから餃子カッピカピになってんぞ」
居間には、二人が並んで座ってる。
柑田川「おじゃましてます」
ジュン「おかえり。どこいってたの?」
ブン「どうして。みんなここにいるの?」
ジュン「どうしてって? 餃子食べにきたに決まってるでしょ」
ブン「うあ〜ん。ジュンちゃ〜ん」
ジュンに抱きついて泣く。
ジュン「私だって。ブンちゃんがそう思ってなくたって。なにがあったって、ブンちゃんのこと親友だと思ってるよ」
ナギ「いちいちめんどくせえな、女って」
柑田川(もらい泣きして)「どっちもかわいすぎる」
ナギ「男も大概か」
そして、餃子パーティーは始まる。
その前に餃子を焼きます。
「山田家伝承 モチモチ羽根付き餃子」
「せーの!」とひっくり返すと見事に焼き色のついた羽根付き餃子が完成!
「お〜〜」っとみんなで歓声を上げる。
「ホクサイ。今まで本当にありがとうね。寂しいけどみんながいてくれればきっと大丈夫。私、がんばるから」
「ほんとうにそうでござるか」
ブン「ホクサイ?」
てっきりこれでホクサイからも卒業かと思ってた。確実にそういう流れだった。
それだけにここへきてのホクサイの決めセリフが心を打つ。
ホクサイ「あ〜、肩凝った。6時間が限界でござったな」
ブン「え? ホクサイ。ホクサイ〜」
ホクサイを抱きしめ、「なんで? なんで黙ってたの?」
ホクサイ「その答えはブンがちゃんと見つけたでござろう」
ナギ「ったく。手がかかるよなブンは」
ホクサイ「ほんとにそうでござる」
「う〜ん、もう」とホクサイをさらに強く抱きしめるブン。
ホクサイ「ブン! 餃子が冷めても良いのでござるか」
ホクサイに言われ、すぐに食卓につくブン。ここで「待ってました!」なセリフを言い放つ。
「山田ブン 自論138」
「できたての美味しさ逃すべからず」
ホクサイ「いつの間に3ケタだっけ?」
全員で「いただきまーす!」となって、ブンがそれぞれの好みに合わせて作った餃子を、それぞれが幸せそうに口に運ぶ瞬間までの、いつもながらの寸止め食事シーンとなる。
東京の夜景をバックに全員の「おいしい〜」の声が重なる。
ブン 語り
「この街にきてもうすぐ1年。出会いと料理の魔法は私をほんのちょっとだけ大人にしてくれた。とはいえ素敵女子大生の道のりはまだまだ遠い。画力に女子力、課題がたくさん」
翌日の朝を迎える。
ジュンも、柑田川も、ナギも。みんなして居間で雑魚寝してる。
昨夜はみんな満腹になって、そのまま寝ちゃったってことだよね。
飛び起きてバイトに行かなきゃと慌てるジュン。学校に行かなきゃと慌てる柑田川。まだ早いよと起きようとしないナギ。
そんな三人に朝ごはんを食べることをすすめるブン。それはもう、命令に近い。
ブン「朝ごはんを制すものは一日を制す」
言われたとおりに従う三人。
その三人には幸せな朝ごはんが待ってる。それは幸せな一日に直結してる。
「これから先どんなことが待ち構えていようとも、ホクサイと飯とみんながいれば私は絶対大丈夫。だよね、ホクサイ」
「私の頭の中ではもう メニューは出来上がってるの」
まずはテクニカルなことを言うと、前半重めにスタートしたストーリーからの後半の畳みかけがスゴい! 最終話ってこともあって、もうそれは最上級にスゴかった。
オープニング前にブンによって封じられたホクサイの決めセリフ「ほんとうにそうでござるか」が、ラストのホクサイ復活の際のセリフになってたり、オーラスでのブンの語り「〜だよね、ホクサイ」で終わると見せかけての、ブンの決めセリフ「私の中ではもう、メニューは出来上がってるの」
視聴者が予想もしなかったであろうタイミングで、それらの名セリフを放り込んでくるあたりがスゴいよね。もうとっくに感動してるのに、これでもかってくらいに感動がさらに増幅した。
モノに対して人並外れた愛着をもって、そのモノを擬人化して描かれるストーリーはあるだろうけど。
始めは〝逃げ〟だったかもしれないその言動が、こうしてブンの成長につながってるのだから、ラストでホクサイとお別れをする理由なんてなかったんだ。
「その答えはブンがちゃんと見つけたでござろう」とホクサイは言った。
ブンがその答えがわかったのだから、この先もホクサイと上手く付き合っていけるはず。
「ホクサイと飯さえあれば」って言ってたブンが、最後には「ホクサイと飯とみんながいれば」って言ってるんだからね。
これ、最高のドラマだよ。
再放送じゃなく今年のドラマだったら「カステラのドラマ大賞」のグランプリを獲ってただろうね(それはどーでもいい話)。
これまで『ホクサイと飯さえあれば』関連の記事を読んでくださったみなさん、ありがとうございました!
「読むドラマ」シリーズでも大人気でした。
このドラマが終わっちゃってガクンと読者が減ってしまうのもさみしいんで、何かしら別の題材を見つけてもらえたら嬉しいです。
そのために毎日、〝快速の執筆家〟は執筆しつづけますので。ではでは。
〈おしまい〉
【番組後記】
先日の『私の家政夫ナギサさん』に続き、またしても人気コンテンツが終了してしまった。
まあ確かに『ホクサイと飯さえあれば』の記事は人気だったけど、それはどうも上白石萌音さんのファンによるものらしい。
本日9月17日(木) 13時現在。
はてなブログ機能「注目記事」の1位が『阿倍カステラの「テレビ買ってよ」』の、バラエティー番組『沸騰ワード10』に上白石萌音さんが出演した回だということが証明してる。
しかも『ホクサイと飯さえあれば』七食目の回が2位で、上白石萌音さんのワンツーフィニッシュとなってるし。
その動向に今後も注目しながら、これからも良い記事が書けるように毎日を積み重ねていきたい。
〈次回お楽しみに〉