カステラ書房の毎日

〝令和きってのドラマウォッチャー〟阿倍カステラが所属する『カステラ書房』

「読むドラマ」はじめたよ◇case1 『中学聖日記 特別編』第9話

 

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■今話のほっこり聖ちゃん

 下着コーナーまで付いてくる黒岩を制止する聖

 TBS『中学聖日記 特別編』第9話より

 

 

 

野上先生の余韻が残るオープニングトーク

前話を振り返る冒頭シーンにも出てくるけど、聖がずっと心の奥に隠してきた黒岩への思いを、「大丈夫」と言って解き放ってくれた野上先生。

 

(前日の)繰り返しになるけど、僕にとってもこれを始めるきっかけをくれた人が野上先生。

 

そう。『読むドラマ』。

この構想は前からあった。だけど具体的にどんなふうにするかが自分の中でつかめなくて、ずっと先延ばしにしてきた。

そうなんです。元来、何でも先延ばしにする奴なんです。

 

でも、野上先生が「大丈夫」と言ってくれたから、これを始めようと思ったんだ(一部、事実と異なる表現アリ)。

 

これまでもかなりドラマを題材にした記事を書いてきたけど、それらはドラマの内容の〝振り返り〟が主だった。でもそれってともするとただの〝あらすじ〟のように捉えられかねない。そう思われる事については本意じゃなかったんで、ずっと腑に落ちない部分を残したままに続けてきてた。

 

それらのモヤモヤを一気に解消し根底からひっくり返すようなアイデアを練ってたんだ。

正直まだ考えはまとまってないんだけど、〝列車・「読むドラマ」号〟見切り発車で出発進行!行けばわかるさ。

 

 

【カステラ書房の見解】

この「読むドラマ」は、広義ではドラマの〝批評〟にあたるが、それを目的としたものではなく、筆者・阿倍カステラが題材とするドラマを観て感じた事、書きたいと思った事をそのまま文章にしたものです。そこに言葉をつむぎながら新しい創作を模索する、言わばチャレンジ企画みたいなものです。よってお気軽にお読みくださいな。

それではさっそく本編へ

 

 

 

◇読むドラマ◇

記念すべき第1回は、やはり中学聖日記 特別編』。その第9話。

 

聖に「もう来ないで」と言われ、「僕なりに踏ん切りつけようと」そう思って聖に別れの言葉を送り、父が暮らす島へ向かうフェリーに乗った黒岩。それを聖が追いかける。これまでとは逆の立場となった。

黒岩を心配する聖が何も考えずに慌てて乗り込んだフェリーは、聖の表向きの気持ちだけでなく本当の気持ちも乗せて出航してしまう。まだ聖の気持ちは決まってないのに。

 

そんな聖に、「なのに、なんで来るんですか? 僕なら平気ですから、帰っていいです」と言う黒岩。

 

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「どうやって帰るのよ、これで」と、聖のちょっとツッコミ風な台詞が風に吹かれてゆっくりとそこから消えていく。フェリーはすでに出航してる。デッキで二人、夜風に吹かれてる。

 

フェリーの中で黒岩晶(岡田健史)は、5歳の時に別れたきりの父を語り、末永聖(有村架純)は、これまで知らなかった黒岩晶を知る。

二人が今なら当たり前のソーシャルディスタンス的な距離を空けて、座席に座っているのが不自然且つ印象的だ。

聖は黒岩の元担任としてそこに座ってる。聖はそれに縋ってさえいる。そうすることで黒岩との危うげな関係をつなぎとめている。この先、どうしたらいいのかもわからぬままに。

 

山江島に降り立つ二人。

その日はちょうどその島一番の「わだつみ祭り」の日(案内所のおばさん談)。

「わだつみ」は日本神話の海の神のこと。きっと漁業が盛んな島なんだろう。

 

父の居所である唯一の手がかり「家具を作っている所」を聞き込みして回る黒岩と聖。そんなに大きな島じゃなさそうだ。割と簡単に島民から情報を得て父・島崎康介(岸谷五郎)と再会を果たす。そんな島崎に息子の彼女と勘違いされ慌てて否定する聖。「教師です。正確には元担任で元教え子で、いろいろあって付き添いに、うん」、最後に「うん」と自分自身にも納得させるような説明をする。そんな居た堪れなさから「後はよろしくお願いします」とさっさと島を去ろうとする聖に、島崎は「船ならないよ。一日一便だから」と告げる。

 

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■海鳥の遥か向こうに見えるフェリー

 

必然的に黒岩と一緒に父・島崎の家に泊まることになった聖。連続して3、4回瞬きをする。冷静に振る舞おうとしてるが内心パニくってる。

 

 

黒岩家

 

家出して連絡つかず行方不明状態の息子を心配する母・黒岩愛子(夏川結衣)と、上布茂(マキタスポーツ)。そこに何故だか家出人探しを依頼された探偵のように居る九重順一郎(若林時英)。

 

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■九重くんよ、なんちゅう柄の服着てるん? 

 

その服のセンス。少なくとも探偵には向いてないタイプ。でもこの探偵が(探偵ではない)末永聖の連絡先を知ってる男・川合勝太郎(町田啓太)の存在を母・愛子に知らせるという探偵っぽい役目を果たす。

 

 

島崎康介がお世話になってる人の家

 

息子・晶が迷惑をかけた事を聖に謝ろうとする島崎。

「親のしつけがなってない」と言いかけて、「いや違う、愛子さんはちゃんとやってるな。俺みたいなダメ親のDNAが入ってるばっかりに」と軽く頭を下げる島崎。

聖は島崎に元担任として、元生徒・黒岩晶の事を話して聞かせる。

「とても真っ直ぐで、一生懸命な生徒でした。優秀で、授業で話したこと、真剣に聞いてくれて」

「俺と似てないなあ」とつぶやく島崎。

「でも、どこか不器用で何か求めてるのに突き放すみたいな、なんかつかみにくいところがあって、それはたぶん今も」次第に元担任としての立場が薄れていく聖。

「そういうところは俺によく似てる」と島崎。父・島崎を通じて、より黒岩晶を知ることになる。外では黒岩が子供らと遊ぶ姿が見える。

 

 

島の商店街に行く二人

 

海沿いの道を二人乗りして走る黒岩と聖。

商店街は結構遠いからと言われ「これ貸してやるよ」と島の人に借りた自転車。黒岩の背中を直前に座る聖。

 

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小さな段差で自転車がふらつき思わずその腰に手を回す。

来る時のフェリーの二人の座席と同じく不自然に空けていた心の距離。僅かな時間、二人過ごしたことで、もうこんなにもそばにいることを感じてる。

 

 

  

いつものファストフード店

 

岩崎るな(小野莉奈)と白石淳紀(西本まりん)と、黒岩母に雇われた探偵・九重らが黒岩が見つからない、手がかりが一つもないと話してる。そこへ偶然に香坂優(中田青渚)。

 

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■頭に富士山乗っけてるみたいな「ちょこんかぶり」ニット帽姿の香坂優

 

香坂「優、謝りたくなーい。謝るのちがくない? 」

九重「はっ? 」

岩崎「確かにちがうね」

白石「いやいやいや、コイツが黒岩に末永の居場所チクったから、るなちが」

岩崎「いいよ、もう。もともと隠してるの嫌だったし、そういうのフェアじゃないし」

香坂「恋愛にフェアとかないから。好きになった方が負け。なんでわざわざ負け戦すんの。中学の時からずーっと。見ててイライラする」

白石「それで余計なことしたの? 」

九重「女子こわっ」

香坂「もったいないって言ってんの。今だって黒岩消えたのも、どうせ末永のこと追いかけて行ったんだよ。いい加減気づきなよ。はなから勝ち目ないって」

岩崎「勝ち目ないの向こうでしょ。だって教師と生徒だよ。みんなが許さない。あの二人に未来はないよ」

 

ドラマ中学聖日記を象徴する会話劇だったので、ちょっと長くなったけど香坂優が加わり元子星中が4人になってからの台詞を全部文字にしたった(どこ弁? )。

 

 

 

東山江海水浴場

 

海岸に座る黒岩。

自動販売機で飲み物を買って聖は後から隣りに座った。

 

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その距離はもう、元担任ではなくなってきてる。

 

黒岩「(夕陽を見ながら)この時間が一番好きです。嫌なことがあっても、むしゃくしゃしても全部溶けてなくなりそうな気がするから」

 

聖「夕陽が好きで、イカのわたがとれて、子供と遊ぶのが上手で、コレが(レインボーチョコレート)が好き。知らなかった」

 

「守ります。この先ずっと」と聖を抱きしめる黒岩。進学をやめて働くという黒岩を、この時はまだ素直に受け止められなかった聖。

 

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東山江海水浴場からの帰りのシーンがそれを物語ってる。再び離れた二人の距離。

 

 

島崎家に泊まるはずだったが、勝太郎との電話で黒岩母・愛子が心配している事や黒岩が母にメール連絡したというのが嘘だった事を知り、黒岩に「私は、ただ心配で見届けにきただけで、他に理由はないし、それを誤解されると‥」と言い、島崎家を出る聖。

その夜はフェリーの待合室で一夜を明かすが、翌日のフェリーは悪天候により欠航で戻れない。辛うじてキャンプ場のバンガローを借りられることになり一安心する。

 

 

◇島崎家 父と息子

 

母・愛子を悪く言う息子・黒岩晶に、島崎は「昔、俺がどんなに酷かったか、どれだけ最低だったか‥」を聞かせる。

 

島崎「いいか晶、先生が好きだったら、愛子さんにわかってもらえるよう努力しろ。俺みたいに逃げるな。本当に先生が好きなら立派な男になれ」

 

 

◇雨のキャンプ場

 

ヒロインは必ず危機的状況に見舞われる。説明が雑?

 

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そう。聖は足を滑らせて崖下へ転落する。

でも愛する男は絶対にヒロインを見つけるよ。

 

それで聖を助けた黒岩は管理棟みたいな小屋に入り、ストーブをつけ聖に濡れた体を温めさせる。その後は、三島由紀夫潮騒』(1954年)の「その火を飛び越して来い‥」みたいな状況になる。これについては小説『潮騒』がこれまで幾度となく映画化され続けていて(初めての映画化は1954年)、その映画でのワンシーンの事を言ってる。「その火を飛び越して来い」はあまりに有名な台詞だし、このシーンがのちの映画やドラマ作りに影響を与え、今や定番と言ってもいいほどによく見かけるシーンとなってる。

 

ストーブで体を温める聖に近づこうとしない黒岩。聖は何度もタオルを差し出し、ストーブにあたるよう促す。

「俺だって男ですよ。だからいいです。ここで」と黒岩は頑なに拒否し、「こうなったのは全部、僕のせいですから」

聖は痛めた足を引きずりながら黒岩に近づきタオルを渡し、「そうよ、黒岩くんのせいよ。全部、黒岩くんのせい。この島に来たのも、ここで動けなくなったのも、元はと言えば‥。もし、黒岩くんに会わなければ、学校辞めることもなかった。ずっと先生続けられた。今も責められて、だから‥。だから、逃げるように離れて。でももうわからない。どんな理由つけたらいいのか、何のせいにしたらいいのか‥‥、苦しい」と、涙を流す聖。この後の台詞は、感情が入っているせいか声が上ずっていて、泣いてるのもあって少女のような印象。

「私もおなじ、あの日のあの時のまま。花火大会のあの海に、私も。どうしたら忘れられるの」

そして、聖が初めて口にする。

 

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「黒岩くんが好き」

 

もうこの告白に関しては、岩崎るなのそれよりも少女っぽい。聖は泣きながら甲高い声で「好き」ともう一度言う。さっきまで頑なに拒否していた黒岩も、聖を抱きしめずにはいられない。この時すでにUruの『プロローグ』が流れていて、その歌詞の「どうして気づいてしまったの – 」の時には見つめ合う二人の顔が近づいて、「あなたを探してる – 」と同時に唇が重なる。あ〜なんて、あ〜なんで、僕は実況中継みたいなことやってんだろ〜。

 

二人のキスの余韻が冷めぬうちに黒岩母・愛子のシーンに切り替わる。

末永家を訪問し、末永里美(中嶋朋子)に、

「娘さんの事でお話があります」と愛子。

第10話は波乱の幕開けとなりそうだ。

 

 

〈 おしまい 〉

 

さてさて。ふむふむ。

ここまで書いてみて率直に、これまでとあんまり変わりないかな? 

確かにラストの聖の告白、からのキスシーンが感動的で書かずにいられなかった、というのはある。そうなると、そこにつなげるために書かなきゃいけない部分が増えたのも事実。

 

一方で、すべてを追っかけて書いてたら文章量が多くなりすぎるのはわかってたので、川合勝太郎と原口律の部分には今回は触れなかった。とても良いシーンがいくつもあったのに、だ。

 

あらすじを紹介するでもなく、ドラマの流れをすべて追っかけるのでもなく、書きたいように書いてみたものの、まだどこにもたどり着けてない、この感じ何?

聖じゃないけど、もうわからなくなった。どんな理由つけたらいいのか、何のせいにしたらいいのか‥‥、苦しい。

 

島崎康介は「俺みたいに逃げるな」と言ったけど、今回は島崎さんの真似させてもらって逃げさせてもらうわ。


今日わからなくたって、明日もわからないわけじゃない。 

明後日には答えが出るかもしれないから。


でも、それなりには「読むドラマ」として機能してると思うんだけど。どうですか? お客さん。

 

さらに、また更新時間( 毎日・深夜1:00 )を大幅にオーバーした事をお詫びします。