□TBSテレビ『中学聖日記 特別編』最終話より
【基本的に全編ネタバレ】
「読むドラマ」case4 は、『中学聖日記 特別編』最終話をお送りします。
本編が長文になってしまったので、いつもの与太話はなしで、さっそく本編へ。
未成年者連れ去りで110番通報され警察署で取り調べを受ける聖。
夏川結衣に乗っ取られサスペンスドラマのようになったオープニングシーン。しかも最終話なのに!
◇取調室
警察官A「末永聖さん、あなたには未成年者誘拐罪の疑いがあります」
聖「黒岩さんとお会いしてお話しすることができれば、誤解とわかっていただけるかと」
警察官B「こちらで調べが終わるまでは無理ですね」
別の取調室では黒岩も
「ぼくが先生を連れ出したんです。一緒にいるところ、母に見つかりそうになって」
◇聖のいる取調室
警察官B「ちなみに未成年者が承諾していたとしても、監護者である親御さんの意思に反していれば罪は成立します」
警察官A「みんな言うんだよ、合意の上だって」
◇聖の新しいアパート
末永里美(中嶋朋子)は聖と黒岩晶の件が警察沙汰になった事を黒岩愛子から電話で知らされ、聖の引っ越し先に訪れる。
「もう好きにしなさい。あなたのことが信じられない。これからは一人でやっていきなさい」とまで言われてしまう。
その後の聖の様子
◇弁護士事務所
愛子に依頼された弁護士から、黒岩晶とは今後一切会わない旨の誓約書にサインする事を要求される。聖は(愛子と)直接話せないか、と聞くが、弁護士からは当然のように拒否される。
◇聖の新しいアパート
聖が帰って来ると、丹羽千鶴(友近)がアパート前で待っている。職員室に残っていた聖の私物を届けに来てくれたのだ。
聖の表情を見て、「やっぱりね。うまくいくわけがない。みんなに反対されて二人で酔いしれて、その代償がこれ。自業自得」
□名言「終わるよ、聖」で有名な千鶴さん
厳しい表情のまま、荷物を渡し言うだけ言って帰る千鶴。
人に厳しく言う人って、本当に相手を思ってあえて厳しく言ってる人と、自分の苛立ちをそのまま相手にぶつけるように厳しくなる人がいる。例えるなら後者は川合勝太郎。
立ち去る千鶴が振り返り聖の元に戻ってきて「ほんとに出来のわるい後輩」と聖を抱擁する。思わず泣き出す聖。
千鶴「くう・ねる・しゃべる。落ち込んでもうダメってなったら、とにかく食べて寝て誰かとくだらないこと喋る。もし他に喋る相手いなかったら連絡よこしな。暇だったら来てあげるから」
子供みたいに泣く聖に、「泣いてんじゃないよ、もう」と言い、その頭を撫でる千鶴は例えるなら前者。
それでまた「びえ〜ん」と萌え系アニメキャラのように泣き出す聖に「泣くよねえ、ほんとあんた。いいよ、泣け泣け、聖は泣け」
千鶴に言われたとおりに食べて、寝る、良い子の聖(またうどん! )。だけど、
「然るべき措置を取ります」と言う愛子の顔と、「先生のとなりにいたいです、この先ずっと」と言う黒岩晶の顔を交互に思い出して、なかなか寝つけない。
◇東京本社 律と勝太郎
勝太郎「なんで、慌てて退散しようとするんですか。人のこと疫病神みたいに」
律「疫病神というよりは、そうねえ、元カノに必死の執着を見せる側から見たらキモい粘着男」
□粘着男と律
例えるなら、律も前者。
余計なこと言うなら、聖は勇者。律曰く。
勝太郎「おれは聖のことを‥」
律「違う。おまえはただプライドが傷ついてるだけ、生まれて初めて思い通りにならなかったから」
律「なあんてね、人のこと言えないか」
勝太郎「聖、向こうの親と揉めて騒ぎになってるとかなんとか」
律「なにそれ? じゃあ、今あの二人…」
勝太郎はまったくの悪人って柄じゃない。プライド抜きで本当に聖のことを思う時もある。
◇いつものファストフード店
黒岩が九重順一郎(若林時英)に聖との今の状況を話す。
九重「あ〜、やっぱりマジやばい。聖ちゃんのことも、おばさんマジで怒らせたこともダブルでやばい」
それでも尚、先生のことは絶対にあきらめないと言う黒岩に、聖と結ばれて欲しいと思ってた、と九重。
「おれ、案外純愛好きなんだよね〜」と黒岩の髪をくしゃくしゃにして「黒岩不屈の男〜ファイト! ファイト! 」と謎の応援歌を大きな声で歌う。黒岩に止められ周囲に「すみません」と九重。
聖に対する「子ども的発言」以外に高校生らしさが見られない黒岩晶というキャラクターを、一撃で「高校生男子」にする九重という存在。出番は少ないけど、実はいい仕事してんだよなあ。だけど九重くん、なんちゅう柄の服着てるん? お気に入りかっ!
◇この前と同じカフェ 律と聖
聖「もう自分の気持ちに嘘はつかない。そう決めたんですけどね。誰のために、どうしたらいいのか、もうよくわからなくて」
律「それは‥、みんなそうよ」
律もまた、どうしたらいいのかわからない問題を抱えている。事実、この直後席を立った時そのまま気を失い倒れる。
「誰か、救急車を」と聖。
◇律が搬送された病院
大事な商談があると病院を抜け出そうとする律に「どっちが大事なんですか。赤ちゃん、いるんですよ」と聖。
聖「最初聞いたとき驚きましたけど、うれしかった。とっても幸せなことです。これより大事なことはないはずです」
聖「戻って安静にしてください」
優しい表情で微笑んでから「はい、先生」と返事して病室に戻る律。
律「決めた。私、母親になる。一人で、産んで育てる」
「今、覚悟ができた。聖ちゃんのおかげ」
聖「おめでとうございます。でも、勝太郎さんは」
律「私もね、考えた。聖ちゃんみたいに誰のために何ができるか、どうするのが正解なのか」
律「でも、気づいたの。正解なんかない。わかるわけもない。だから自分自身の正解を探すの。一人で立って進む先に、答えがあるって信じてる」
◇元子星中の三人
久しぶりに会った黒岩にカバンを勢いよくぶつけ、「的かと思った」とあの頃のように笑う岩崎るな(小野莉奈)。「お互いがんばろうね」と声をかける。その姿を見て白石敦紀(西本まりん)が少しほっとして、
その後に見せた岩崎の笑顔が「青春」って感じがした。
□ハローワークでは職は見つかりそうになかった聖だが、花屋でたまたま求人チラシを見つけ即採用される。よりによって花屋って。弓馬凌ぎが天職みたい。
□その後のスカイツリーが映る。「わあ、キレイだなあ」ってただの田舎もんの感想
◇弁護士事務所
事務所の一室で、愛子と弁護士、そして聖。
「夕べ、黒岩くんが来ました」と聖は話を始める。
聖「会いたいと言われました」
回想シーン
黒岩晶「先生、誰がなに言おうと関係ない。ぼくは先生さえいれば、それで」
聖「ドアは開けていません。そのうち、黒岩くんは帰りました」
聖「黒岩さんには当初、こうお伝えするつもりでした。私たちの決意は固い、待てる、信じてほしい、と」
聖「でも、黒岩くんはやっぱりまだ18で危うくて、何かの拍子にすぐに感情に流されて、進めず昔に戻ってしまう。黒岩くんを心配するお気持ちがよくわかりました」
そこまで言うと聖はカバンから封筒を取り出し、サインをした誓約書を愛子に差し出した。
聖「黒岩くんにとって大事なのは、未来です。どんなに心で思っても表に出してはいけなかった。本当に彼を思うなら与えなければいけなかった。時間や距離や可能性。それが大人としての責任だったのに、そうできなかったこと、」と席を立ち「心からお詫び申し上げます」と頭を下げた。
聖「もう、会うことはありません。黒岩くんにもそうお伝えください」
それだけ言ってしまうと、「失礼します」と部屋を出ていった。その間、愛子は一言も言葉を発しなかった。発することができなかったのだろう。
余計な言葉がなく非の打ち所のない、真摯な姿勢が感じられる見事なプレゼンだった。これが商談なら愛子社長は聖の会社との取引に(過去の因縁から)、即決は無理でも後日良い返事をするはずだ。そのくらいには愛子が聖に持つ印象は変わったような感じはした。
◇黒岩家
晶に聖のことを聞かれた愛子は「これが先生の答えだから」と聖がサインした誓約書を見せる。
愛子「わかる? 晶。どうしてこうなったのか。どんな思いで先生がこれを書いたか。あなたに何ができる? 」
愛子「この思いに、どう答えられる? 考えなさい、晶」
◇退院する律 病院前
律「おや? 川合」
「Stop ! No.Thank You お断り」
勝太郎「まだ何も言ってませんよ」
律「言うでしょ、その顔じゃあ。私の大嫌いな型にハマった言葉。おれにも責任が、籍入れようサポートします一緒にシンガポールに来てください全部お断り」
勝太郎「言おうと思ってたこと全部言われました」
「おまえのボキャブラリーはその程度」、そう言って去ろうする律に、「それか、もういるんですか? 他に誰か」と聞く勝太郎。
「ああ、この前の」と律。
律「久しぶりに会っただけ、いない、誰も」
勝太郎「なら、おれが」
律「この子は私の子。一人で大丈夫」
少しずつ波長が合ってきてるような二人。でも勝太郎が変わらないかぎり簡単に気持ちをゆずるような律ではない。人に対しても厳しく見えるけど、それ以上に自分に厳しい人なんだ。
◇観覧車
勝太郎「聖、なんか感じ変わったな」
「いつも、どこか遠慮がちな聖はもういない」
あはは、と笑う聖。
勝太郎「まっすぐどこか遠くを見てる。おれも励まされるよ。ちゃんと答え出さなきゃって」
聖「ありがとう、そんなふうに言ってくれて。私のほうこそ励まされる」
勝太郎に連れて行かれたのは観覧車乗り場。わけがわからず言われるがままに聖は一人で観覧車に乗る。
しばらくすると聖の携帯電話に律からの着信。律は、ある人から頼まれて自分が考えたという作戦を実行すると聖に告げる。律に相談した相手・黒岩の姿が観覧車下に見えた。
黒岩「先生」
聖「もう先生じゃない」
黒岩「聖ちゃん」
観覧車のラストシーンは流れに沿って台詞を書いたりしない。
ただ台詞を並べたものを読んで伝わるシーンじゃないと思ったからだ。
『中学聖日記』はもう終わる。あと少しだ(もう放送は終わってる。主観が強すぎるって)。
最後は筆者(以下、僕)の感想も交えながら締め括りたい(暴走をお許しください)。
黒岩に頼まれて律が考えた観覧車作戦はとてもドラマチックだった。
二人が接触をしないで思いを伝えるには「これだ! 」という作戦だったようだけど、誓約書には電話での連絡もダメってなってるよ。まあ、そんな野暮なことは言わない(もう言った後だけど)。
黒岩が最後にどうしても会って伝えたかったこと。
黒岩「聖ちゃんに幸せになってほしい。だからもう会わない。連絡もしない。でもずっと願ってる。幸せにって」、だった。
それってどういう思いだろう? って考える。
好きな人に会わない連絡もしないで幸せを願うって、黒岩にとってはどういう思いだろうって。
聖も聖で。
「私を変えてくれた。黒岩くんが力をくれたの」と言う。
ドラマ『中学聖日記』を観るかぎり、僕は黒岩が聖を変えたとは思えない。黒岩に恋をしたことは一つの〝衝動〟だった。言い方悪いけど、避けられなかった事故のようなもの。でも、事故ってほぼ100%悪いことしかないけど、ここで喩えてる事故は聖にとって自分を変えるきっかけになったという事だ。その事故でたくさんの傷を負い大切なものを失い、それらを代償として黒岩と恋におちていった。
あの頃の二人の恋はロマンチックでドラマチックだった。
でも、それはパッケージされた限定版の恋。その限られた期間にしか許されない、いやその期間中さえも許されてはいなかった恋。
中学聖日記って、中学生の黒岩が先生である聖を好きになったことを綴った、あのレポート用紙に書いた日記なんでしょ。これが原作みたいなことで物語がはじまる。
観覧車を降りた時に聖は律からそのレポート用紙を手渡された。黒岩に頼まれたと言って。
2015年の夏に、黒岩の前から姿を消した聖。
そこで終わった〝中学聖日記〟のつづきに黒岩晶はこう綴っていた。
2018年12月
聖ちゃんがこの先ずっと
笑っていられますように
黒岩晶
「中学聖日記」の1度目のアップデートだ。
□観覧車を降りてから、それを読む聖
聖がそれを読んで、黒岩くんと出会ってから別れるまでを思い返したのがドラマとしての「中学聖日記」。
その物語には未来がない。こうして別れることが決まっているから。
だからパッケージされた限定版の恋のように見える。そのつらい思いと痛みだけが残る。
◇5年後 タイ
ラストシーンはとてもドラマチックだった。
二人が出会った頃のシチュエーションが、海を渡りタイで展開される。夕陽を写真におさめるシーン。
大切なものに失くしてから気づくなんてよくある話で、また別れてもなおその相手を好きでいる人なんて珍しくもない。
そう考えたら。
会えない期間が二人を育てるじゃないけれど、ずっと二人が本当に、お互いを信じ思いつづけることだってできる。その期間は失うはずのない愛を育んでいたと言えなくもない。
最愛の人と別れた後の5年と、最愛の人と再び会えるかもしれない5年。どちらが幸せか、なんて考えてみる。まあ、あっけらかんと次の相手見つけちゃう人なんかには当てハマらないけどね。
二人が再び出会ったのは5年後。
約束していたわけでもない5年後の再会。
遠距離恋愛を5年も続けてたら別れる事にだってなりそうだけど、この二人は約束もしてないし連絡も一切取ってない。
ただ二人がそれぞれに相手を思い続けた5年が実を結ぶことになったのだ。
観覧車のシーンより前の取り上げてないシーンがあって、今さらそのシーンの話をする。
子星中学の教頭だった塩谷三千代(夏木マリ)が唐突に黒岩家に訪ねて来る。
あまりに唐突で違和感があった。
ただ、黒岩愛子を励ましただけのシーンにも見えたけど、塩谷元教頭の言葉は聖の事を、聖たちの事を言ってたように思えてくる。
観覧車のシーンで一旦終わった「中学聖日記」には、5年後に再会するという続きがあった。
5年後の聖は33歳かな。黒岩は23歳か。
すっかり大人になった二人が、もうあのレポート用紙に続きを書いたりはしないだろうけど。
二人が再会し結ばれた事で「中学聖日記」は2度目のアップデートとなった。
そして最後に千鶴(友近)が言うんだ。
「終わるよ、聖」
最終話だけに。
【番組後記】
「終わるよ、聖」と言うわけで。
平日・月、火、水、金と放送されるスケジュールに合わせて、随分と短期間に集中してやってきた執筆作業ももう終わる。
こんなにも頻繁に記事を書くようになったのも、きっかけは『中学聖日記 特別編』だった。このドラマにはほんと感謝しかない。
これまで何度か観てるはずなんだけど、まるで初めてみるように観られたのは、となりに〝文章をしたためる〟という友がいたからかもしれないなって思うんだ。
そんな友と一緒に観ることで、これまで以上に楽しく、物語にもより深く入り込めた気がする。
大切な友の存在に気づかせてくれてありがとう。
「神様ありがとう僕に友だちをくれて(※)」とスターリング・ノースがラスカルに会わせてくれたことを神様に感謝する気持ちがわかったよ。
(※)『あらいぐまラスカル』OP曲「ロックリバーへ」より。
とすると僕にとって『中学聖日記』は神様だね。
それと、こんな僕の稚拙な文章を読んでくれてる人がいるとしたら、いやいると仮定して、その方々にも感謝したい。こんなにだらだらした長文なのにね。
僕はラスカルに出会うことはないだろう。
でも僕の文章を読んでくれる人にはこの先出会えそうな。
そんな気がしてる。
〈おしまい〉
追記
記事作成中にプレビューが(記事途中より)表示されないという不具合があり、確認のため何度かテスト公開をしました。その際に見られた方がいましたら、すみませんお騒がせしました。結果、公開には問題がなく、プレビュー表示が不具合だと判明しました。でも原因不明。なんで?