カステラ書房の毎日

webで小説やエッセイを書く〝阿倍カステラ〟の勤務先。それが『カステラ書房』。今日もひっそりとオープン‼︎

あの頃、野島伸司さんが語っていた『新世紀の詩』という約束のようなこと。


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☆ドラマ『世紀末の詩』(1998年)より☆





「さてと、数学の授業といこうか」

「嘘でしょ?」

「ほんとだよ、君はずいぶんと遅れてる」



これがソープランドの個室での会話だからね。

あの騒動で芸能界から姿を消してしまった成宮寛貴さん演じるホストに貢ぐために、ソープランド勤めを始めた高校生・工藤 紅子(ソニン)。学級主任の藤村 知樹(京本正樹)は工藤 紅子の勤務初日からソープランドに通い、彼女の勤務時間をお客として独占する。もちろんそういう行為をする訳でもなく何をしてるかというと、英語の授業をしてるのだ。


冒頭のセリフは数学教師役の藤木直人と工藤 紅子の会話だ。藤村 知樹が別の約束があり、日課としていたソープランド通い? の代役を数学教師の湖賀 郁巳に頼んだのだ。一連のやり取りがいかにも野島伸司さんの脚本だなあと思えるシーンで印象に残った。


このドラマ『高校教師』は2003年に放送されたもの。そういえば最近ソニンを見ないなあって思ってたら、「YouTubeチャンネルを再稼働しました」というサムネイルを偶然見かけた。「これまで芸能活動を休んでて、YouTubeで活動を再開するのか」と勝手に思ってたら、ソニンさんはずっと舞台を中心に活動していたみたい(失礼! )。YouTubeチャンネルは10年前からやっていて5年程前から放置状態だったけど、今回のコロナ感染問題によるステイホームの波に乗るような形で再開を決めた流れのようだ。言い方が悪いかな? けど悪意はない。むしろ好意すらある。


現在の年齢が37歳。ソープランドに勤めていたのが19か20歳の頃。もちろん役の上での話。あえて言うことでもないか。

僕が一番印象に残ったソープランドでの名シーン(なんでここに限ってるのかは謎)は、ずっと自分の勤務時間を買い占めてくれてた藤村先生(京本正樹)に何のお返しも出来ない女子高生・紅子(ソニン)が、「これ、来たお客さんに渡すようにとお店から言われた」と説明しながらバレンタインデーのチョコレートを渡すシーン。なんか突然「うわあ」みたいな声が出て涙がこみ上げてきた。せつなくて胸が苦しくて、それでいて救いのような微かな幸福感がある。またこれこそ野島伸司さんの脚本だなと感慨深く、印象につよく残るシーンだった。



コロナ感染問題によるステイホーム状態が、ソニンさんがYouTubeチャンネルを再稼働するきっかけになったように、僕が2003年のドラマ『高校教師』を視聴するきっかけになった。だからといって「コロナありがとう」みたいなことにはならないけれど、このドラマを時代を遡って視聴することができて本当に良かった。

上戸彩さんは疑いの余地なく可愛い女性だ。でも個人的にはそれ以上でもそれ以下でもなく、特別にファンだということもなかったのだ。でも彼女が演じる町田 雛のそれは特別だった。最終話だったか、町田 雛の未熟な「(先生を)愛しています」というシーンが象徴的だった。17歳の女子高生の「愛しています」は、誰の耳にも未熟なものに聞こえるけれど、それは危うげだが時として芯をとらえることだってある。その大人の女性とは言い切れない少女でもない彼女と、対峙する余命わずかの32歳の高校教師。二人して「愛とは何か」と野島伸司のお約束ともいえる課題に命をかけて答えを出そうとしてる。これは一足先に命を落とした学級主任・藤村 知樹(京本正樹)と町田 雛の親友・工藤 紅子(ソニン)の二人にも言えることだ。




「愛とは何か」か…



TVドラマ制作も時代と共に変化してる。今や「U-NEXT」や「hulu」などの動画配信サービスが制作に絡むことも少なくない。野島伸司さんの作品もちょくちょく観られてうれしいのだけれど。野島伸司さんのファンなら忘れていない、勝手にだけど野島伸司さんが約束したくらいに思ってることがある。


時代はもう移り変わってしまったけれど、数字の上だけじゃない何かが時代を変えることだってある。


ドラマ『世紀末の詩』が放送されたのは1998年。もう昔話みたいに思えるけど。

あの頃、野島伸司さんが語っていた『新世紀の詩』という約束のようなこと。

あれからずっと観たいなって思い続けてる。


『高校教師』にも出演していた蒼井優さんなんて観てると、その思いがこみ上げてくるよ。


「絶対に叶わない」とは言い切れない夢を、僕はもう少し見ていたい。

もしも近日中にも夢が叶ったとしたら、その時は心から「コロナありがとう」と言おう。